俺は、月を見上げた。
ここ何ヶ月間か、ずっと月を見上げていた。
君が月を見たのなら、
俺も同じ時に、月を見ていた可能性がある。
住む場所は違えど、同じ月。
それくらい月を見上げていた。
三日月の時もあったし、
半月の時もあった、
そして、ここ何日間かは満月だね。
満月は、秋ばかりが似合うんじゃないな、
雪景色もなかなか似合うな、
そう思いながら月を見た。
俺が冬の夜空を眺めるのは理由があって、
それは、来年、ぶちかますことになっている、
作品作りのためでもある。
遡ること3ヶ月前。
一緒に作品作りをする友達と、
打ち合わせを兼ね、飯を食べている時のことだ。
「ボウガクダイって知ってる?」
「ボウガクダイ?いや、知らんな」
「冬の満月の時、ボウガクダイの景色は神秘的だよ」
俺は、その話しを聞いてからというものの、
冬の満月の時、ボウガクダイで写真を撮ろうと思って、
冬を迎えた。
よし、もうちょいで満月だ、
ここ何日間は、そう思いながら、
月を見ていたんだ。
この前の土曜日の朝、
母にふるさとの天気を確認するため電話をした。
「土日は吹雪くみたいだよ」
「そっかぁ」俺は、残念で仕方がない声を出した。
「土曜日は、月が一番大きく見えるらしいね」
「何で俺が満月を待っていたのを知ってる?」
言った覚えはない。
俺が実家に帰るくらいしか言ってない。
「いや、ニュースで、そう言ってたからね」
「いやぁ、見たい」そう言われると、なおのこと見たい。
その土曜日は、何度となく、母とメールをし、天気を確認した。
結局、ボウガクダイで写真は撮れなかった。
俺は、ここ何ヶ月間か月を観察してきたから、
どれくらいの周期で月が欠け、そして満ちていくかを、
なんとなく知った。
まだ、何回かあるだろう。
冬の夜空の満月の日、
俺は、月を見上げている。
楽雲庵塾塾長
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